北斗の拳 蒼天の拳 DFS 北斗の庭園 / 北斗学 / 『北斗の拳』の物語構造についての論攷 / 三十一篇全比較 / 南斗最後の将篇

ラオウ様とケンシロウの対決や近し。ヒューイ、シュレン、ジュウザ、フドウ、リハク、トウを率いユリアが復活

三十一篇全比較

2007/03/14 初版公開

15.南斗最後の將篇

 前篇でリュウガが選んだユリアの花婿を五車星が迎えに行く、というお話で、ユリア生存はこの篇ではじめて読者に知らされるが、實はリュウガ登場で既に兆してあった為、連載当時のことを顧みるに、儂はそう驚いた憶えがない。嗟乎、成程、とすんなり受入れたように思う。ケンシロウの驚きようが温和しく、演出も抑制されていた為かも知れないが、多分これは武原堀三御大の狙い通りだろう。流石『北斗の拳』、『リングにかけろ』みたいに墓からドバッと腕が飛出すなんて演出はしなかった。

15.南斗最後の將篇 110-120話(全11話)

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序:シュレンの執念
破:ジュウザ起つ
急:ケンシロウを選ぶ由縁

 この序破急では、シュレンが此程執念を尽す南斗最後の將とは何者か、あのジュウザをも動かす南斗最後の將とは何者か、南斗最後の將が何故ケンシロウを選ぶのか、と一度もユリアを描かずにユリアを描いている。また急で一旦ケンシロウが南斗最後の將よりフドウを助けに戻ることで、次篇でケンシロウがユリアと落合うよりラオウ様との闘いを選ぶことを先にそれとなく示している。そしてユリアはそういうケンシロウを待つ女だということも先にそれとなく示している。この序破急で描き出すユリアは"待つ女"である。

起:フドウ登場→風の旅団→善のフドウ→朱の軍団→南斗最後の將?
承:雲のジュウザ→長槍騎兵→ジュウザの放蕩→ジュウザ覚醒→五車星奮闘
転:ジュウザの過去→ジュウザの才→黒王号強奪→フドウの人柄→ヒルカ非道
結:ヒルカ殺害→ジュウザ決戦→フドウ脱落→将の正体→ジュウザ最期

 待つ女ユリアを描く序破急に対し、起承転結ではユリアの為に命を擲つ男が描かれているわけだが、こうして見るとジュウザが異常に目立っている。ケンシロウより目立ち、最早ヒューイもシュレンもジュウザの前座にしか見えない。この篇は飽くまでユリアの蘇生を描いており、ジュウザの為にあるわけではないのだが、ユリアが如何に重要であるかを描く為にジュウザを描いているのであろう。ジュウザの描写が何よりも際立っている。
 原御大の後の作品…『花の慶次 ―雲のかなたに―』『公権力横領捜査官中坊林太郎』『猛き龍星』『戦国群雄伝 ―SAKON―』『蒼天の拳』などを見れば明らかだが、ジュウザは原御大の主人公像に大きな影響を与えたと重要キャラクタだ。はじめ李小龍と松田優作と高倉健しか主人公像を持っていなかった原御大にとって、自由気儘なジュウザはもしかすると異質で描きにくかったかも知れない。然し類型的な遊び人風のキャラクタでありながら、ジュウザは当時流行した同様の他作品のキャラクタと比べても頭一つ抜けて格好良く描けており、どうも原御大にジュウザ型主人公を描く素養が抑も具わっていたらしいことが判る。故に歴史物がヒットしない少年誌で『花の慶次 ―雲のかなたに―』を連載し、それが異例の大ヒットしたのだが、誰が見てもジュウザ型の主人公前田慶次が殆ど黒王号と同じ姿で描かれた愛馬松風に騎乗していたことは象徴的である。『花の慶次 ―雲のかなたに―』の前田慶次と松風は『北斗の拳』のジュウザと黒王号だったというても過言ではない。そのジュウザを惜しげもなく殺せる武原堀三御大の太っ腹といったらない。

正しい父親、フドウ

 この篇のもうひとりの主役、フドウの描写も素晴らしい。案内役、提灯持ちに過ぎぬフドウが實に好ましい人物として描かれている。またフドウのようなキャラクタは類型的なようで居て近頃なかなか見掛けないから余計好い。同じような役を充てると、他の作家はつい母親として描いてしまいがちだ。『グラップラー刃牙』の範馬勇次郎の如き滅茶苦茶な父親を描く作家は現在数多居るが、現在フドウやシュウ、赤鯱、アサムの如き正しい父親を描ける作家は原御大くらいしか居ない気がする。
 そういえばMBSラジオ『スッゴい!おとなの時間』で吉本興業のお笑い芸人「バッファロー吾郎」の木村明浩が話していたが、中学生の頃、塾から帰宅すると、母親がテレビを見ながら泣いていたそうだ。母親が見ていた番組はテレビアニメ版『北斗の拳』で、フドウがタンジとジロを救う回だったという。それ以来木村の母親は毎週『北斗の拳』を見るようになったらしい。北斗istでなくとも何か感じる話ではあるまいか。

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補註

ページ数表記について
 普段は「ジャンプコミックスxx巻yyyページ」を指す「JC:xx:yyy」という表記を用いているが、今回は「完全版全14巻」が刊行されそちらで再読されている北斗istの方々も多かろう故、版に囚われぬよう「第xxx話のyyページ」を意味する「#xxx:yy」と表記した。「#002:06」なら「第2話の6ページ」を指している。但し一応単行本片手に内容を確認しながら誤りなきよう検めたつもりではあるものの、「捨て頁」「缺落頁」の所為で版によって指定したページ数には若干誤差があり、指定するページは決して正確ではない。抑も前後一二ページ程度の誤差を許容する検証である為、指定ページの画像も示しておくが、だいたいの目安として御覧頂きたい。
[北斗学]
ジュウザはスレッガー・ロウっぽいね
フドウはリュウ・ホセイっぽいね