北斗の拳 蒼天の拳 DFS 北斗の庭園
週刊コミックバンチ 2009 No.26


週刊コミックバンチ 2009 No.26

 『蒼天の拳』一本は外伝や義風を足した三本分の威力と云うことか!

『蒼天の拳』

 リュウオウとシュケンの降天台説話の時もそう思うたのだけど、ローマ建国神話を思い出させるね。

 イタリアの都市国家の王プロカは王位を長男のヌミトルに譲って死んだが、弟のアムリウスが兄の王位を簒奪し、ヌミトルの男児は皆殺しにされ、娘のレア・シルウィアは処女であることを義務づけられるウェスタの巫女にされた。
 ある日シルウィアが眠っていると軍神マルスが降臨し、双子を生んだ。アムリウスは怒り双子を川に流す(『出エジプト記』のモーセを思い出すね)が、双子は軍神マルスが使わした狼の乳を吸い、啄木鳥が運ぶ餌を食うて生き存え、牧夫ファウストゥルスに拾われ育てられた。双子は狼の乳房(ルーマ)を吸うていたことからロムルスとレムスと名付けられた。

 リュウオウとシュケンも双子ではないものの双児ではあり、狼と係わることからロムルスとレムスの類話と見なしうる。そして今回のヤーマの子も、拳志郎とヤサカが同じシュケンの子孫であることを示されていることで、このロムルスとレムスの類話と見なすことが出来る。
 ロムルスとレムスは後に祖父ヌミトルと再会して(死んでなかったのか!)アムリウスを殺害、ヌミトルの王位を回復して母シルウィアを解放したが、新たな都市を建造する際に諍いを起こし対立、ロムルスは乱闘の最中レムスを死なせて(殺して?)しまう。
 記紀神話にある海幸彦山幸彦説話も同じような話で、多分モンゴルのテムジン(チンギス・ハーン)とジャムカの旧交などもそうだろう。およそ建国神話とはこのようなものである、という典型なのだ。『DRAGON BALL』のベジータもその典型に当て嵌まるだろう。リュウオウとシュケン、拳志郎とヤサカの関係も、ロムルスレムス型類話(兄弟相剋説話)の様式を引継いでおり、リュウオウとヤサカは恐らくレムスや海幸彦、ジャムカの憎悪を引受けて背負うているキャラクタなのだろう。
 因みにリュウオウシュケン説話は「カイオウ(琉拳)vsケンシロウ(神拳)」「カイオウvsラオウ様」という三つの双児形を為す三重構造になっており、その構造がややこしい為にやや重たく感じられた。今回の「ヤサカの先祖縁起」はこのやや重たい説話を「北斗vs西斗」「拳志郎vsヤサカ」の二重構造に再構成しているのではないかと思うが、その場合、『蒼天の拳』は如何にしてヤーマの子孫の憎悪を浄化するのであろうか。カイオウの場合はカイオウの血に対するコンプレックスを「實はリュウオウの子孫なんだよ」と説明することで浄化している。ヤサカの場合はどうなるだろう。普通に説明しただけじゃ余計恨まれそうな気がするなぁ。

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