ア……アインはきっと…
この子が寝つくまでは
ねむらない父親だったのでしょうね

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アイン伝

英雄アインの伝記


アイン伝

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名称・呼称アイン
渾名・異名賞金稼ぎのアイン→賞金首のアイン
初登場『北斗の拳』第140話「驚異のアイン!の巻」
所属帝都→北斗の軍
拳法・闘法ケンカ拳法
身分・階級賞金稼ぎ→賞金首→英雄
属性・分類猛者-反権力/見事な漢
漢な言葉たのむぜ/わが愛しの/ゲンコツよ!!(JC:18:114)

続き

メモ*1

アインについて

 カバラ*2に於ける「無」をAinと呼ぶ。全ての存在を"原因無き原因"とするカバラ思想に於いてAinは存在ではなく全ての概念を超越し、不可知とされるが、その外輪に至れば理解可能とされ、その外輪を「無限」を意味するAin Soph、更にその外輪をAin Soph Aur(無限光)と呼ぶ。数秘術ではAinに「0」、Ain Sophに「00」、Ain Soph Aurに「000」を充てる。

 この解説は『北斗の拳』のアインとはまっっっっったく関係ない。

アインについて2

 ソロモンの七十二柱の魔神の一。アイニ、ハボリュムとも。
 地獄の二十六個軍団を指揮し、蛇と猫と人の頭を持ち、クサリヘビに乗って現れる。召喚されると召喚者に機知と放火衝動を授ける。
 三つの松明と猫の頭はエジプトの女神バスト*3の先祖返りで、その煽動者としての性格を表しているという説がある*4

 この解説も『北斗の拳』のアインとはまっっっっっっったく関係ない。

アインについて(今度はホント)

 愛娘アスカを養う為に賞金を稼ぐケンカ拳法の男。自己申告ながらハズ、ギルと互角の腕前らしい。もし本当であるならば相当の達者である。何せ南斗聖拳の伝承者とケンカ拳法で渡り合うのだ。ラオウ様のお膝を土で汚したジュウザには遥かに及ばぬが、それでも規格外と強さと云えよう。
 アメリカのパトリオットにしか見えない『ROCKY』のアポロの入場コスチュームを真似た衣裳は『北斗の拳』作中でも一二を争うド派手なもので、その強烈なスタイルとキャラクタは『燃える!お兄さん』の「雲のロッキー」に受け継がれた。原哲夫御大の絵でなければギャグにしか見えない。

アイン登場当初

 初登場は第140話「驚異のアイン!の巻」、ギャグにしか見えない重機に乗って、ギャグにしか見えない衣裳を身に纏い、賞金首の男たちを引き摺ってゲイラに面会、8千ジュドルの賞金を女たちの宝石やドレスで要求する辺りにアインのキャラクタの面白さが見える。ゲイラの前に現れた賞金稼ぎどもから話を聞いてケンシロウに興味を持ち、その賞金稼ぎどもをぶちのめして独りケンシロウの前に立ちはだかった。この頃はとても目付きが悪かった。

 この時点でアインがケンシロウを追詰めるほど強いことを期待した読者は恐らく殆どあるまい。だが今までの話と明らかに違う演出に心躍らせた者は多い筈だ。儂がそうである。特に「おまえら」「女は/いるのか!?」(JC:16:121)や、「なんの/ために?」と問うケンシロウに小指を立てて「これの/ためだ!!」(JC:16:127)と答えるなど、今までの『北斗の拳』にはなかった異質な台詞が実に魅力的であった。恰もジュウザが甦ったようである。
 案の定ケンシロウには手も足も出ずに斥けられたが、「おまえには/女が/いるのだろう!!」(JC:16:142)と助けられてしまうキャラクタも素敵だった。この時のアインはとても無様だ。然しこの無様が寧ろ恰好良い。ブゾリをぶちのめして「ごめんな」「やっぱり/おれは/強いよな」と確認し、「するてえと/あいつが/強すぎる/のか」と独り納得、「おい」「ケンシロウ!!」「おまえの/首は必ず/このアインが/とってやるぜ/おぼえとけ!!」(JC:16:146-147)と宣言する姿が堪らなくダサ恰好良い。「まいったな…/負けた/なんて……」「おれの女は/許しちゃ/くれねぇ/からな…」がとても渋い。このアインを以て『北斗の拳』は少年から青年の物語になったような気がする。

 処でこの「女」は愛娘アスカのことだが、我が娘を「女」と呼ぶことに違和を覚える人も少くあるまい。
 然しこれが何の問題もない……否、寧ろ日本語としてはこちらが正しかったりする。例しに明治以前の古書を読んでみるといい。あるいは歴史人物事典などを引いてみよう。手元の『戦国時代人物事典』を引いてみると「細川ガラシア」は「明智光秀の女」とある。こんな具合だ。星条旗バリバリの衣裳を身に纏っておいて、アインめ、なんて正しい日本語を使いやがる!

アインはモヒカンザコに毛が生えた程度?

 ケンシロウに敗れた後はバットに誘われてうっかり郡都に殴り込んでしまい、バットの赤心に触れてアスカが「胸を張って/誇れる/歴史」を作ろうと決意、その後ひと悶着あるも無事賞金首に転職し、特別房に囚われたハズとギルのハーン兄弟を解放、アスカをケンシロウに委ねてファルコの首を狙った。

 然しアインは何も考えていなかった!
 大軍を率いて北斗の軍を包囲するファルコの姿を崖下に認め「しかし/おれら三人じゃ/どうにもならんぞ/どうするんだ?」(JC:17:072)と言う鷹揚なアインにハズは「へっへっ」「これを見て/おどろけ」「不発弾よ!!」「こいつで信管を/叩けば/やつらあ全滅よ!!」と自爆テロを提案する。「し…/しかし/だれが/やるの?」とアインが訊ねると、ハズは背中掻き掻き「ん?」「そりゃあ/おめえ〜〜/え〜〜〜と〜」「ジャンケンよ!!」と答える。
 この行はまるで今までのザコ……モヒカンザコの会話である。アインとハーン兄弟の知的水準は実は今までケンシロウに殺されるばかりだったモヒカンと大差ない。

 処がここからが違う。ジャンケンに負けたアイン*5が苦笑いをしつつも「わ…/わかった/おれが行こう!!」とハンマーを執るや、ハズに肩を抑えられ、ギルに肘打ちを食らわされ、気絶させられてしまう。曰く「ガキが/いるやつには/荷が重い」(JC:17:072-074)。見た目も知能もモヒカンザコと大差ないが、ハーン兄弟は英雄であった。

 アインは又してもアスカの為に命を拾った。結局ハズの自爆があってさえファルコには一条の傷も負わせられず、ギルとともに北斗の軍に身を寄せ帝都攻めに従うことになる。

『北斗の拳』随一のカッコよすぎる男

 中央帝都の目前、ファルコとケンシロウの戦いの最中、天帝に呼ばれるリンに従ってバットとともに帝都に潜入の後、天帝を探すリンとバットとは別れてアインはひとりジャコウの首を狙う。
 首尾よくジャコウを発見するや、アインは見事な手並みでジャスクを殴り飛ばし、ジャコウを「じいさん」呼ばわりして暴行、とどめを刺そうとする。然し「天帝の命を握って/いる」ジャコウを殺されては適わじと慌てたミュウに制せられ、その隙を衝かれて地底の作業場に落されてしまう(JS:18:064-065)。その真っ暗な地下でアインはミュウ、サイヤとともに天帝を発見、持っていたマッチで明りを灯し、天帝ルイの姿に驚いた。

 アインたちと同じく作業場に落ちてきたリンとバットとともに天帝ルイとミュウから全ての真相を聞いたアインとバットは地下から脱出しケンシロウとファルコの戦いをとめねばならない。然し恐らくはジャコウたちの仕業であろう落石で皆を庇ったアインが酷い傷を負う。恐らく致命の傷であった。

 それでも「フ…オレは/賞金稼ぎの/プロだぜ…」「いや それ/以上に首を持って/敵地からずらかる/のは天才的だと/いわれたもんだ」(JS:18:104)と云って、地下水脈を掘る為に岩盤に打たれながら放棄された杭を拳で打込もうとする。夙に名言と名高き「たのむぜ/わが愛しの/ゲンコツよ!!」はこの時に発せられた掛け声だ(JS:18:114)。
 よろめきながら杭を打つアインをリンが泣いて縋ってとめる。然し「フ…」「大丈夫だリン/さがっていろ!!」「オレみてえな/一介の賞金/稼ぎの命でも/役にたてば」「アスカとの/約束も/果たせるって/もんだ!!」と不敵に笑い(JS:18:118)、「この命/燃え尽きようとも/すべてをこの拳に/かけてやる!!」と渾身の一撃を杭を打込み、腕は砕け、杭が頭まで地面に埋まった。
 だが岩盤は砕けない。竟に力尽き倒れ伏すアイン。「な……/なぜだ/このオレの/命じゃ/不服か!!」「くそったれ!!」と落涙する。その涙が岩盤を割った!(JS:18:121)

 噴き出した水が地を満たし、地上に飛出したバットが天帝の無事を報せケンシロウとファルコの戦いを止める。リンとルイの肩を借りて脱出するアイン。然しアインの目はもう見えない。力なく倒れ、「こんなことで/くたばるんじゃ/ねえ!!」とバットに助け起されながら、「いや……/オレは もう/だめみてえだ…」と別れを告げる。バットは「お…おまえには/まだ…ア…アスカを/見守ってやる/仕事が残ってる/だろう」「お…おまえが/死んだらどう/するんだよ」と励ますが「おまえが/いるから/なにも心配/してねえよ」「へっ…コレの/ために死ぬってのは/なかなかのもん/だぜ……」「フッ……/少し…」「カッコ/よすぎる/な………」と言い残して息を引取った。バットが云う通り「バ……/バカヤロ〜!!」「てめえ/カッコよすぎる/よ!!」(JS:18:123-127)。

アインのグローブ

 アインの死後、アスカはアインのグローブをケンシロウに贈り、以後ケンシロウの右手にはアインのものと思しきグローブが描かれるようになった。然しレイアが捨てたシャチのペンダントを拾った時まではフルフィンガーであったが、「待つがいい」「シャチは/生かして/送り届け/よう!!」と云ったその齣からはフィンガーレスになっている(JC:20:025*6
 カイオウに半殺しにされて以後は同じ形のフィンガーレスグローブを両手にするようになるが、恐らくこれはアインのグローブではあるまい。カイオウに磔にされた時に恐らく穴が空き、気絶している間に恐らくシャチかレイアかタオかコヨテに捨てられてしまったものと考えられる。

アインの評価

 兎に角「カッコよすぎる」。天帝篇の真の主人公はアインだ。決してケンシロウでもバットでもファルコでもない。アインだ。
 アインの腕前は尋常ならざると雖も並み居る他の拳法家に比べれば考慮するに値しない。ブゾリより強いとはいえケンシロウから見れば似たようなものだ。間違いなくボルゲより弱かろう。ジード程度か少し強い程度でしかあるまい。
 然しアインの生は、死は、ケンシロウのこれまでの強敵たちに決して劣らぬ、寧ろそれをすら凌ぐ価値を持つ。アインは決して強大とは云えぬ、謂わば凡人の身で、天帝を救い、ファルコを救い、中央帝都の圧政に虐げられた民衆を救うた英雄である。歴史に残る偉大な男である。アスカが「胸を張って/誇れる/歴史」を作った英雄である。アインは歴史に名を残した偉大な英雄である。ファルコの名が忘れ去られることはあってもアインの名が忘れ去られることはあるまい。

 アニメ版のアインには夢があった。それは飛空船を飛ばす事である。愛娘を抱いて大空を目指したのだ。技術力があったのかなかったのかは判らないが、原作ではただ子持ちの賞金稼ぎであったアインに明確な目標を持たせる演出には見事に成功していた。我が友人はアインの臨終シーンで流れた『WIND&RAIN』(歌・子門真人)に泣いたと謂う。尚この飛空船設定は『FINAL FANTASY II』のシド登場より一年半以上も早い。

aside

*1
 本記事は1998年から2004年まで執筆掲載していた『北斗人物列伝』の再編集掲載記事です。2004年にサイトを改装している最中にHDDがクラッシュし、全てロストしたと思っていましたが、別のHDDに取っていたバックアップを2011年三月に発見したので、少し手を加えて再掲することにしました。
*2
qabbalah
 ユダヤ教由来の神秘思想。
*3
 古代エジプトの猫の頭を持つ豊穣の女神。バステトとも。
*4
 バストは古代エジプトの獅子女神セクメトと混同されることが多く、セクメトは殺戮を好む凶暴な女神であった。
*5
 この時アインは人差指と親指を立ててアメリカンなチョキを出して負けているが、現実のアメリカンは殆どジャンケンしない。大概はコイントスで決めてしまうらしい。
*6
 同一ページ内の、レイアのアップの一齣を跨ぐ間に亡くなっているので驚いた。

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