このくらいから私
弱くなってくのよ
ただのお色気担当に
なるの

北斗の拳 蒼天の拳 DFS 北斗の庭園
三十一篇全比較 09.カサンドラ篇 052-060話(全09話)


三十一篇全比較 09.カサンドラ篇 052-060話(全09話)

 ウイグル獄長の格好良さが解らない奴は男じゃないと思う。近頃はどうだか知らないが、web北斗界を全て見渡せた二十世紀末、北斗istの間では北斗南斗元斗以外の敵ではウイグルが最強、という説が支配的であった。儂は敢てザク様を推す者であるが、確認出来る限りでは矢張りウイグルというしかない。ケンシロウの敵でない者を見渡しても、リュウガやアサムだとウイグルの方が強そうだ。北斗でもジャギくらいなら勝てようし、南斗でもユダ辺りと充分やり合える。
 どう見たってウイグル獄長は強い。ウイグルはシンがユリアを奪うて以来初めて自らの拳力でケンシロウを追詰めた敵だ。曾てハートの平手打ちで白目を剥いたことがあるケンシロウだが、あの時は気絶まではしなかった。然し蒙古覇極道を喰ろうた時は数瞬といえど完全に気絶していた。落ちたのが墓地でなければ、ウイグルが油断せねば、ウイグルがその気であれば、あの時ケンシロウは死んでいたに違いない。畏るべし、ウイグル獄長。
 そんな恰好良いウイグル獄長が大活躍する全九話。

続き

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  • 序:挑戦を待構えるウイグル獄長
  • 破:ケンシロウを危機に陥れるウイグル獄長
  • 急:救世主の為に命を賭すライガとフウガ

 #054:06では「フフフ…挑戦者よ/くるならこい!」とケンシロウ来襲に先立って読者の期待を煽り、次頁で「ケンシロウと他二名」が到着、その待構えるウイグルの巨敵感たるや、並々ならぬ存在感である。"不敗不落のカサンドラ伝説"の語感も頗る恰好良い。この敵に挑むこと自体がケンシロウの危機ではないかとさえ思わせる力があった。ジャンプで読んだ時にはえらく昂奮したものだ。
 この期待は見事叶えられ、戦いがはじまるやウイグルは#056:10-13にてケンシロウを圧倒、嗟乎、恰好良いよウイグル、この泰山流千条鞭の演出には武論尊も兜を脱いだという逸話がある。今までにも幾度か危機はあったが、敵は常に何らかの策なり何なりでケンシロウを危機に陥れただけ、真正面の拳力比べでケンシロウを追詰めたことはなかったが、これぞ『北斗の拳』屈指の名場面、ケンシロウ連載はじまって以来の危機、真っ向勝負で敵の奥義を喰らい白目剥いて気絶した!
 残念ながらウイグルは敗れたが、否々、まだ武論尊はケンシロウを許してくれない。今度はカサンドラ自体が頑張る。#058:15では"トキ救出"という目的そのものに危機が訪れる。折角カサンドラが陥落し、ライガとフウガは望まぬ殺生から解き放たれたというのに、拳王侵攻隊が現れて、再びカサンドラを閉ざそうとする。ライガとフウガはカサンドラ解放の救世主の為、死を賭してトキの独房への道を護り通す。
 この篇の主題は"危機"だ。ウイグルがもたらす危機ではなく、ウイグル以降に続く危機を暗示している。その危機である拳王軍の強大さを演出する為にウイグルは強くなければならず、トキ救出も困難でなければならなかった。

  • 起:マミヤの献身→伝説のカサンドラ→トキの為人
  • 承:ライガとフウガ→抑圧者ウイグル→対ウイグル獄長
  • 転:ウイグル獄長大活躍→窮鼠ウイグル→拳王親衛隊
  • 結:ライガとフウガの死→トキ→カサンドラの悲劇

 この篇がカサンドラを主題とするお話であることは起の中央に位置する#053:03で明らかだが、見るべきはマミヤの献身とトキの為人である。ケンシロウに尽すマミヤ、マミヤを見守るレイ、無制限に優しい男トキ、この物語が以降如何なる形で展開するかを暗示している。カサンドラはその最初の障碍である。然しケンシロウにしてみるとカサンドラを訪れたのはトキを救出する為に他ならず、カサンドラ解放までは望んでいない。
 然し承で囚人ライガとフウガが登場、ケンシロウに期待を寄せ救世主として迎える。するとウイグル獄長は見せしめにミツを殺さんとし、また石の断頭台を用意させる。抑圧者が強大であればあるほど虐げられる囚人のケンシロウに対する期待は当然高まり、それまでライガとフウガが勝手に担いでいるように見えたケンシロウがその気になったように見える。また此処で示されたウイグルの抑圧は後に御登場あそばされる拳王様が統治する世を予告する意味もある。
 泰山流千条鞭で捕われたケンシロウが真正面から蒙古覇極道を喰らう転ではウイグル獄長が絶好調、然し北斗鋼裂把で逆転の後、小さな墓穴に折畳まれて収納、カサンドラは解放されたかに見えたが拳王親衛隊が登場し、まだ戦いを終えられぬことが判る。此処でのウイグル獄長の抑圧と絶好調はこの篇で影のみ御登場の拳王様の強大さを演出する為のもので、拳王様が強大であるからこそ一時的にでもウイグル獄長はケンシロウを圧倒せねばならなかった。
 ライガとフウガが死に、トキの力が明らかになる結ではじめてケンシロウとラオウ様の対立が正式に決定、以後トキがケンシロウとラオウ様を導く恰好で物語が展開する。

門神ライガフウガが啓くは宿命の門

 この篇をまとめて気付いたが、ライガとフウガはカサンドラの門とトキの獄舎までの道、二度もケンシロウの為に命を賭して道を開けている。道教には扉に唐の名将秦叔宝と尉遅敬徳の絵を貼って悪霊を避ける"門神"信仰があり、仏教でも寺院の山門に仁王を置いて仏敵を防ぎ、日本にも神社に狛犬を置き、村の入口にサエノカミを祀る信仰がある。『旧約聖書』創世記にはケルビムという天使が炎の剣を持ってエデンの園の入口を護るという記述があり、これは古代アッシリアの守護者「クリーブ」に由来するらしい。何れも二体で一対とすることから、名からすると風神雷神を起源としようが、武論尊も門神に類する観念からライガとフウガを造形したのだろう。このライガとフウガが開いた門をケンシロウが出た描写がないことから考えて、ライガとフウガが開いた門はラオウ様と争う戦場への宿命の門だったと読むことも出来る。とした場合、カサンドラじたいを拳王軍の門だったと見なせよう。

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