あれだけ酷い目にあって
何もされてないってのも
無理な話よね

北斗の拳 蒼天の拳 DFS 北斗の庭園
三十一篇全比較 11.裏切りのユダ篇 073-082話(全10話)


三十一篇全比較 11.裏切りのユダ篇 073-082話(全10話)

 このお話は怪我を負うたケンシロウとラオウ様を休ませ、代りにレイの退場を華々しく飾った最後の十話だ。レイはNo.2キャラクタとしては別段突出した特徴はなく、まぁ云ってしまえば凡庸なNo.2キャラクタであるが、このひたすら辛く悲しい別離があるからこそレイは『北斗の拳』で最も心に残る印象深いNo.2キャラクタになれたのだと思う。この単純で情熱的な気性も、こうやって死んだから煩くなく美しい想い出として振返ることが出来る。もしこれで生残っていたらきっとヤムチャ化しただろうからなぁ…。
 ケンシロウにとってもレイは特別な存在だった。ケンシロウが「強敵」と呼ぶ者は殆どが敵で、味方であってもトキやシュウは年長、バットやアインは拳力で頼りに出来ず、いずれも対等の「友人」ではなかった。だがレイだけは、殺されたコウの復讐の為ケマダを殺した夜明けには雑談しながら水を呑み、マミヤをセミヌードにしてケープを被せたレイの心を斟酌し、戦癰で動きを封じられた時には殺人鬼トキの正体がアミバであると教わって助けられ、拳王侵攻隊が西に向うていると知れば先づはレイに任せるなど、お互い腹を割って話合い、力を信じ助け合うことが出来た対等の友人であった。多分生涯通じてもケンシロウには「友人」と呼べる者はレイしかいなかった。だからだろう、ラオウ様の時、カイオウの時、ユリアの墓前でマミヤに語る時、レイは強敵の遺影の中で最もケンシロウに近い好い位置に描かれていた。

続き

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  • 序:狗法眼ガルフを退治
  • 破:レイ、余命僅か
  • 急:ユダがレイを憎悪する回想

 前篇に続き死が予告されているマミヤはメディスンシティーで案の定危機に陥る。この危機に陥ったマミヤが妙にエロティックで何やら原御大この頃モヤモヤしてたのかと勘ぐってしまうが、ケンシロウが到着して狗法眼ガルフを退けたことで一旦危機が去る。次いでレイはマミヤの仇がユダであると知り、マミヤの女を取戻す為ユダを最期の敵とし居場所を探す。然しレイの余命を知るユダはレイを避けて隠れ、ユダの宿星「妖星」が「裏切りの星」と呼ばれることが明かされる。何とか村に戻ったレイはトキから薬によると心霊台の苦痛を提示され、心霊台を選んで最期の戦いに望む。するとユダが到着し、マミヤを捕えてレイを嘲笑い、少し拳を交えて顔を一筋切られ、レイへの憎悪の縁起を語る。
 序破急の絵を見ると、序でマミヤの死、破でレイの死、急でレイとマミヤの死の兆しが描かれていることが判る。この一篇の柱は別離と云えようか。

  • 起:苦しむレイ→メディスンシティーへ→マミヤの危機→マミヤ処刑→ケンシロウ到着
  • 承:UDの紋章→ユダの悪行→マミヤは女→レイの献身→嘲笑うユダ
  • 転:マミヤ、トキに薬を託す→ユダの謀略→レイの選択→ユダ到着→レイとユダ
  • 結:レイ、ユダを圧倒→ユダの水計→伝衝裂波→ユダの赤心→永遠の別離

 起承転結を見ると、起承はマミヤ、転結はレイを重点的に描いている。
 先づ起でマミヤが危機に陥り、承で女を棄てたことで苦しむマミヤが描かれる。幾ら強いと雖ど所詮は女、女は女として生きるべし、という武御大の女性観がよく現れている行だが、この行は圧巻である。というのも、此処で重点的に描くマミヤの苦悩はマミヤが登場して間もなき第二十八話の「悲しいことには/なれている/つもりでしたが…/ひとりになるのは/つらいですね……」(JC:04:042)という台詞で既に読者には明かされており、その悲しみをレイが拭うこともレイが登場して間もなき第三十話の「いいか 女は/自分の幸せだけ/考えていれば/いいんだ!」(JC:04:087)という台詞で既に読者に知らされていたからだ。つまりマミヤとレイは登場してから退場するまでずっとそういう関係であったわけだが、五十話近くも…即ち一年近くも経った後だ。普通読者は憶えていない。五十話も前に武御大、堀江御大がレイの死を予定して仕込んでいた…とは思わぬが、よくこうやって死に至る理由になり得る設定を五十話も寝かせて置けたものであるし、五十話も登場させて性格設定に矛楯を生じさせなんだものである。
 転でレイはマミヤが提示する安楽な死を退け苦痛を選び、結で脚を封じられ危機に陥るレイが描かれる。転では心霊台を点くことでトキが、結ではコマクを斃しダムの水を堰きとめることでケンシロウがレイを助けているが、トキの援助は静かで、ケンシロウの援助もレイに対して恩着せがましくなくて佳い。このあっさりした援助が實に男らしい。また心霊台の苦しみに耐え、水計の危機を乗越えるレイの情熱は、読者から見てもマミヤの凍て付いた女心を融かして尚餘る。レイ程の男に此程迄に愛されて、その後マミヤが他の男と結ばれるとはとても思えぬが、それでもマミヤはスカートを穿く程度には女を取戻すことが出来た。マミヤのスカート姿は第百四十六話(JC:17:048-065)で確認出来る。

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