六十四代伝承者トキ

メモ*1 メモ*2 メモ*3

伝統武術の継承

 伝統武術の伝授制度は仏教に倣うたものである。よく巷間では武術の奥義が記された「秘伝書」を相弟子乃至他流の者たちと奪い合う、なんてお話が作られているが、あの「秘伝書」なるものも仏教の伝授制度に由来する。然しあれは所謂「目録」に過ぎず、内容は単に秘儀の名を記すのみ、相応の修行を積んで充分な知識を蓄え口伝を授った者でないとさっぱり理解出来ないように書いてあるものだ。他流の者が見てすんなり理解出来る程「秘伝」は簡単ではない。伝統武術の伝授制度も同じく「秘伝書」には奥義の名を記すのみで、要諦は口伝で授けるようにしてある。故に漏れて困るのは「秘伝書」より口伝で、口伝が漏れると技を見られただけで秘奥を偸まれてしまう。故に伝授も稽古も秘密裏に行わねばならない。

続き

 だが、どうも余人の『北斗の拳』にまつわる議論を読んでみるとと、まるでリュウケンを講師とする学校のようなモデルを想定して論を展開しているように見受けられる。北斗神拳は仏教由来の伝統武術である。然も六十三代リュウケンも六十一代霞鉄心も入道していた。ならば北斗神拳の修行内容は極めて仏教に近かろう。基礎鍛錬→伝授式→自習→基礎鍛錬→伝授式→自習の繰返しで、伝授式に際しては先づ神仏と先祖の位牌に礼拝し、実技はリュウケンが套路を一通り演じて終り、後は各自自習、という工合、リュウケンの指導はその伝授式の一日限りで、一ヶ月に精々一二時間ある程度に過ぎず、余日は稽古を眺めるばかり、気が向けば時には修正することもあった、という程度であった筈だ。
 このような制度の下にある修行者は、師から套路及び絶技、稽古法を教わったとしても、その套路、絶技、稽古法が何に結びつくか解らぬ場合が多い。然し此処で師を疑うてはならない。師を疑うて怠けた修行者は功夫成らず敗れ去り、師を信じて稽古し通した弟子のみが功夫を得て奥義を授ることが出来るのである。『法句譬喩経』にある周利槃特の説話*4のような感じだ。映画『BEST KID』で描かれたペンキ塗りやワックス掛けに拠る修行法は、このような仏教的な修行思想を米国人流に解釈し描写したものであろうと思う。今の日本人にも八極拳の「馬歩」や太極拳の「推手」などは殆どペンキ塗りかワックス掛けに見えると思う。『DRAGON BALL』で描かれた亀仙流の修行もその雰囲気をよく描いていた。
 師弟制度で学ぶ伝統的な教学や技藝は銭で知識を売る学校と違うて常に弟子の資質を試す。故に師は一見不親切としか思えぬような態度で弟子に接し、科した稽古も意味が解らない。だから多くの伝統武術はボクシングなどと違ってなかなか成果が現れず、多くの場合武術としての能力を疑われる。特に合気道や太極拳など緩やかな動作が目立つ武術が疑われ易い。また実際このような修行法を採用している武術ではなかなか強くならないものだ。というのも、この手の修行法の成果は殆ど弟子の自得に任されており、自得するまでは幾ら稽古しても同じなのだ。ラオウ様が仰有った「拳の強弱は/そもそも/天賦の才!!」(JC:13:145)とは将にその通りで、同じ稽古を続けても三日で自得出来る修行者もあれば三十年やって自得出来ぬ修行者もある。この差を決めるものが「天賦の才」なのだ。ラオウ様は「天賦の才」を持って生れた者は誰に何を教わらずとも真の奥義を得るものであると仰有ったわけだ。その限りでは「もともとは、拳法の才能豊かな人物だったのです」と『週刊少年ジャンプ特別編集 北斗の拳SPECIAL』にあるように、このような制度下でそれなりに強くなったジャギは確かに「才能豊か」であった。ただ他の兄弟がもっと「才能豊か」だった為に歪んでしもうた。もし北斗神拳でなければ、否、もし北斗最強の時代でなければジャギは歪まずに済んだかも知れない。

北斗神拳の構造

 別記事で考察したように、儂は北斗神拳固有の奥義は「水影心」「七星点心」「無想転生」の三つくらいしかなく、後は経絡秘孔の知識が三家拳より深い程度の差しかない、無想陰殺や闘勁呼法、転龍呼吸法など多くの奥義は三家拳と共有で、套路や絶技に至っては他流の借り物に過ぎず、ラオウ様は形意拳や少林拳、或いは泰山流華山流など、トキは恐らく陳式太極拳、ケンシロウはブームに乗って載拳道、ジャギは翻子拳や羅漢拳辺りを別に修行していた、天将奔烈や剛掌波はラオウ様、有情拳はトキ、残悔拳(残悔積歩拳等)はケンシロウ固有の奥義であろう、と考えている。北斗神拳最強の秘訣はその曖昧模糊とした実態なき形態故であろう、不定形故に対策を立てようがないからだろう、と思う。もし戦いて勝ちを得んと欲するならばカイオウの如く「七星点心」「無想転生」を破った上でこちらの絶技を「水影心」で偸まれぬ間に斃すしかあるまい。
 もしこの假説が正しければ、北斗神拳を北斗神拳たらしめる要素は「水影心」「七星点心」「無想転生」のみ。ならば北斗神拳は一子相伝と謂う。強力ながら恐らく劉家拳と共有の「雷暴神脚」とは違うてきっと伝承者しか授らぬ奥義であった筈だ。ならばリュウケンが確実に伝承者に選ばなんだと明記されるラオウ様とジャギはその奥義を授っていない。だからラオウ様はリュウケンに半殺しの目に遭い、ジャギは容易くケンシロウに敗れた。一応ラオウ様は「七星点心」の種明かしをして貰うたので会得出来、どうせ会得出来ぬからと「無想転生」の一偈も聞き出せたが、それでも「水影心」までは御存知でなかったから、カサンドラの如き研究施設を持たねばならなんだ。もしラオウ様に「七星点心」の奥義がなければ多分その拳力はウイグル獄長に勝る程度であったろう。ジャギにしても「水影心」「七星点心」どちらか一方でもあればハンやヒョウを凌いだかも知れず、「水影心」「七星点心」を授らぬ標準的な北斗神拳修行者はジャギくらいの実力ではなかったかと思う。1932年以前に金克栄と戦った霞拳志郎が丁度ジャギくらいではないか。えぇーっ!とか云うな。

トキ伝承の可能性

 だが、トキだけはどうも「水影心」「七星点心」「無想転生」を授っていたような気がする。というのも、ケンシロウがカサンドラを眼下に臨み「本来なら/かれが北斗神拳の/伝承者になるべき/はずの男だった…」(JC:06:179)「おれと/ユリアの/ために……/死の灰を浴び/そして トキは/伝承者への道を/断念した…」(JC:06:187)と話していたからだ。「伝承者への道を/断念し」てもラオウ様に「つ……/強い!!」(JC:08:166)と云わしめるだけの力を具えていたことから多分トキは最後まで修行しリュウケンから相応の奥義を授っていた筈だが、猛虎による伝承者銓衡の場(JC:07:157)に居なかったことから猛虎による伝承者銓衡はトキ被爆よりあとの出来事だったと考えられる*5。それでも「本来なら/かれが北斗神拳の/伝承者になるべき/はずの男だった…」というケンシロウの話をケンシロウの主観でなく「リュウケンによる内定があった」と読むなら、北斗神拳の伝授制度がどのようであるか詳らかでないが、もし普通の僧侶と同じように伝授式と認可の間に修得期間を幾日乃至幾十日置くような形態であるとするならば、トキは一度伝承者に選ばれ、伝授式を受けながら、認可を授る前に被爆、それで再度銓衡があり、ケンシロウに決定したという裏話が考えられる。もし違うとしても、似たようなことがあって、少なくとも「七星点心」は授っていたのではなかろうか。そうでなければ「七星点心」を駆使するラオウ様と互角に戦えるわけがない。

トキとゼンギョウの謎

 そうでなくてもトキだけが授った奥義があることは明らかである。先づラオウ様が「きさまは/まだ/トキの拳を/伝授されては/いまい!!」(JC:08:123)と仰有っていた。此処では明らかに柔拳のことだが、もう一つ、軽功術もあったのでは、と思しき描写もある。ゼンギョウがコウリュウの死を伝えに来た時の会話(JC:12:012-013)だ。
 これには少々長い説明が居るのでお付合い頂こう。
 先づ息乱れるゼンギョウに肩を貸して駆けてくるバットが「トキィ!」と呼びかけている。もしゼンギョウがトキとケンシロウを頼ってきたのなら、バットは間違いなく「トキィ! ケーン!」或いは「ケーン! トキィ!」と呼びかけた筈だ。だからこの時ゼンギョウはトキだけを頼って来た。
 そしてゼンギョウが「ラ…ラオウが/わが師コウリュウを/その手に!!」「コウリュウ様の/ふたりの息子が/残っておりますが/あの拳を封じる/事は!!」と報告する。もしラオウ様来訪直後にゼンギョウが出発したなら、ゼンギョウがコウリュウの死、ゼウスとアウスの襲撃を知るわけがない。故にコウリュウがラオウ様の手に掛り、ゼウスとアウスがラオウ様に襲いかかることを知った上で出発した筈だ。よってゼンギョウはゼウスとアウスを助けて欲しいとトキに願うていたことが解る。だからトキは血を吐きながらも「急がねば/なるまい」(JC:12:015)と一歩踏出した。
 そのトキをケンシロウが止めたのは「病んだ体では/復活したラオウを/倒せぬ」(JC:12:016)からだが、ならば何故ケンシロウがトキの代りに助けに走らなんだのか。それどころかトキがケンシロウに仕合を申込み、ケンシロウも受け、急ぐ筈のゼンギョウも暢気に「天帰掌」の講釈を垂れている。奇妙である。
 実際はそうならなんだが、ラオウ様がその気ならゼウスとアウスはこの時点で死んでいる。何しろゼンギョウはコウリュウが殺害されてから出発した。先づラオウ様がコウリュウを殺害し、マントを羽織り、コウリュウの傍らに仏像を手向ける(JC:12:008)までの時間は長く見積もって精々五分程度、その間にゼンギョウはトキの許へ駆け、報告し、トキを連れて帰り、ゼウスとアウスの命を救うてもらわねばならなんだ。片道二分半以下で走らねばなるまい。ゼンギョウに期待出来る最大走行距離は假にゼンギョウが陸上競技世界記録級のランナーだったとしても二分半で精々1km程度*6、『週刊少年ジャンプ特別編集 北斗の拳SPECIAL』に拠るとケンシロウでも100m9秒台だから、普通に考えればもっと短かった筈である。もしこれでゼンギョウが間に合う予定だったならば、ラオウ様→トキまでの距離僅か1km以下、期せずして随分近くにいたものだ。トキは身長188cmの長身である。トキが平地に立った時に見える水平線はおよそ5km先の地面である。つまり5km迄は見渡せる。ラオウ様が1km以内に居たとして、もし荒野にあれば、ラオウ様とトキはお互いに目視出来た。このくらいの距離ならトキもケンシロウも充分間に合うただろうし、トキが「一寸待て」と叫べばラオウ様に聞えたかも知れぬ。走らずともゼウスとアウスを助けることが出来た。少なくともケンシロウは2km先の内緒話でさえ聞える異常聴覚者だ。コウリュウとラオウ様の会話さえ聞えていただろう。
 それなのにケンシロウはただトキを留めただけ、助けに行こうとしなかった。これをどう考えようか。
 結論から云うと、上記の計算で儂はケンシロウの走力を相対的に高く、ゼンギョウを低く見積もった。だから変な工合になっている。上では假にゼウスとアウスの猶予を五分とし、ラオウ様とトキの距離を1km以下としたが、要はゼンギョウはラオウ様が与えた猶予の半分で駆け、報告に少し時を費やしても、残りの時間で充分ゼウスとアウスを助けられる予定でトキを頼ったのだ。では何故ケンシロウではなくトキを頼り、ケンシロウが代りに駆けず、トキもゼンギョウもそれを看過したのかを考えれば、この齟齬は解消する。
 その答えは嘆かわしい程簡単だ。実際は片道1km以下どころかもっと遠く、それでもゼンギョウは与えられた猶予の半分でトキの許に至ることが出来、トキもそれ以下で駆けつけることが出来たが、ケンシロウは出来なんだ、というだけのことだ。多分、トキとゼンギョウは「雷暴神脚」の如き軽功か羅虎城の如き軽功かは解らぬが兎に角千里を一里に縮める恐るべき神行法を修得しており、急げばゼウスとアウスの危機に間に合うたのだ。然しケンシロウにはそれがなく、ゼウスとアウスの危機に間に合わぬ。故にゼンギョウはトキを頼り、トキは「急がねば/なるまい」と一歩踏出した。然しトキが血を吐いて蹲るのを見、ケンシロウが留めたことで、ゼンギョウは諦めざるを得なんだわけである。
 ケンシロウが神行法を使えぬのは、ケンシロウが未熟な内に伝承者に選ばれ、充分に修練を積まぬ間にリュウケンが殺されたからだ。でなければ如何に相手が南斗六聖拳の一と雖もそう易々とシンに敗れようわけがない。それだけケンシロウが未熟だったわけだ。だいたい年の差があるラオウ様とトキとケンシロウが同じ段階で修行していたわけがない。ラオウ様とトキはケンシロウより数段上の奥義を授っていたが、ケンシロウはそれを後回しにして伝承者の奥義を授った。故にどれも半端なまま荒野に投出され、ああしてシンに敗れることになった、というわけである。此処で北斗神拳は失伝の危機に瀕したのだが、リュウケンは多分トキに期待して死んだのだと思う。トキがおればどうにか北斗神拳を後世に伝えられるだろうと。ラオウ様にしても、病気のトキなら待てば死ぬが、元気なケンシロウに己が知らない奥義まで授けられては、ケンシロウが無駄に強くなるから二人の再会を怖れたのだ。ラオウ様はジャギと違うてケンシロウを侮らない。流石である。臆病? 馬鹿な。これは慎重というのだ。臆病とは失敗を怖れて動くべき機に動かぬことを謂う。ラオウ様は失敗を避ける為に出来ることをなさっていた。これを臆病とは謂わない。
 トキとゼンギョウが使えたであろう軽功術をケンシロウが使えなかったと考えられるデータが『週刊少年ジャンプ特別編集 北斗の拳SPECIAL』に載っていた。ケンシロウのプロフィールだ。ざっと目を通すと常人とはかけ離れた数値が並ぶも「肺活量8700cc」「走力100m9秒台」とある。この二つだけ妙に普通なのだ。どちらも稀な数値ではあるが、とても「200キロの大男を25mも蹴り飛ば」し「ジャンプ力9m台」を誇る者の数値とは思えない。肺活量は仕事量の最大出力を決める要素であるし、走力は瞬発力と関わるだろう。ならば「200キロの大男を25mも蹴り飛ばす」「ジャンプ力9m台」の男はもっと疾くもっと長く走れそうなものだ。然し「肺活量8700cc」「走力100m9秒台」である。これは多分、この程度の身体能力でも「200キロの大男を25mも蹴り飛ばす」「ジャンプ力9m台」を可能にする奥義があるのだろう。恐らく「転龍呼吸法」と「雷暴神脚」だ。然しケンシロウは「100m5秒台」「42.195km1時間弱」を可能にする奥義は授らなんだ。故にこんなに普通なのだ。きっとケンシロウにこれがあればミスミもトヨもフドウもシャチも助かったと思う。残念ながら。
 ではケンシロウが使えぬ奥義を何故ゼンギョウ如きが……と思われるかも知れぬが、あの小さく善良そうな眼に欺されてはいけない。ゼンギョウは「コウリュウ父子に/つかえるゼンギョウと/申します!」と名乗る男である。黒夜叉に類する北斗琉拳(劉家拳)の従者、或いは「わが師コウリュウ」とも云うたのでコウリュウが得意と思しき曹家拳を学ぶ弟子かも知れない。そうでなくとも「天帰掌」の如き本来は秘匿されるべき符牒*7について講釈を垂れるだけの知識を具えた人である。可成り北斗神拳に近しい身分の人に違いない。假に黒夜叉の如き従者であったとするなら、黒夜叉があれだけの軽功を使えたのだから、ゼンギョウとてどの程度の腕かは解らぬが使えてもおかしくはなく、アニメ版では忍者が如き恰好をした腕利きとして描かれていた。これを認めるならゼンギョウは實はこっそり強い。そうでなくてもゼンギョウは岡村善行(武論尊の本名)に由来するキャラクタだ。普通のキャラクタとは思えぬ。ゼンギョウを侮ってはならない。
 このように考えると、ケンシロウは北斗神拳史上最高の天才であったかも知れぬが、最強の伝承者ではなかった。『蒼天の拳』によると霞拳志郎こそ最強の伝承者であり、最も深く北斗神拳に通じた男はトキであったと思う。

トキが伝承していたとして

 トキが伝承者に選ばれた時、よくラオウ様が道場を去らなんだものだと諸賢は思われるかも知れぬ。だがこれは多分リュウケンが秘密裏にことを運んだが故に御存知になられなかった為だろう。もし皆の前で次期伝承者を発表したならば、秘奥の伝授を盗み見されてはいけないし、ジャギのように異議を唱え暴発する者がいないとも限らぬ。奥義を特定の弟子に秘密裏に伝授するということは伝統教学伝統技藝にはしばしばある。最強の暗殺拳である北斗神拳なら尚更であろう。授け終えた後であれば別に知られても最早「七星点心」「水影心」を授った伝承者は無敵である。異議があろうとジャギの如く返討ちだ。リュウケンが考えてか、抑もそう決っていたからか、秘密裏に伝授が行われた為ラオウ様は御存知なかった。ケンシロウの場合はまだ未熟だったので「水影心」「七星点心」があってさえまだラオウ様に敵わなんだだろうが(現に習熟してからもウイグルに苦戦している)、ラオウ様が「この拳を/封じるのは/おまえだ!」と云った時のトキは實はラオウ様より強かった*8。だからあの時ラオウ様は非常に危なかった。そうでなくてもラオウ様は「七星点心」があってさえリュウロウに苦戦している(TH:04:134-145)。ラオウ様が本格的にお強くなるのは拳法家狩りをはじめカサンドラに多くの拳法家を収監してからのこと、またメディスンシティで霊薬の研究をはじめて以降のことなのだ*9。あの頃ならレイ、ジュウザ、ファルコ辺りであればまだ相討ちを狙えただろう。それ以前は一位を競う程お強くはなかった。
 一方ケンシロウが選ばれた時あれ程取乱したジャギは「兄より/すぐれた弟なぞ/存在しねぇ!!」(JC:05:110)と主張する男だった。トキのことは「ジャギでさえも/認めていた」(JC:06:179)し、多分残念には思うてもすんなり受入れたと思うが、ケンシロウの時は相手がケンシロウである。ケンシロウは拳を潰したり記憶を奪ったりする奴だとジャギは思うていただろうし、ラオウ様が伝承者に興味がなく、トキが辞退して、次は自分だと思うたこともあったろう。実力の世界で年功序列を重んじるジャギが悪いのだが、「兄より/すぐれた弟なぞ/存在しねぇ!!」と信じているのだから仕方がない。それが目論見通りにいかず、事実未熟で甘く厭な弟が継いだものだからジャギは怒った。もしトキが被爆せずすんなり伝承者を継いでいたらきっと魔道になど落ちずに済んだだろう。案外英雄として乱世を渡って行けたかも知れぬ。そう思うとジャギの才能は惜しむべきである。トキの「ありあまる才能」(JC:12:120)同様アキを一度は見逃したジャギの一片の心を惜しむ。

跋文

 儂は1998年以来トキが一度伝承者に選ばれた可能性を提唱しており、この説は『修羅の国』でも採用して頂き、決して一般的ではないもののある程度知られるようになったと思う。然し古いHDDを整理して初稿を発見して驚いた。1998年の時点で既に儂は北斗神拳がインドから仏教とともに伝来した秘孔経絡の知識を得て創始されたと考えていた。ある程度仏教とアユール・ヴェーダ医学の知識があれば誰でも予想出来たのだが、それでも九年前によく解ったなぁ、当時の方が儂賢かったかも、と今の爲體を不甲斐なく思う。ゼンギョウの神行法も1999年頃に既に考えていたようで、古いファイルに記述があったのでこちらで採用した。
 上記假説はまだ未完成で、もう少し煮詰めないといけない。これからの西斗月拳、劉家拳の如何によって根底から覆されるかも。その際は描き直します。

aside

*1
2007/02/09.再編公開
*2
2007/02/11.後半加筆
*3
2007/02/12.大幅加筆
*4
 仏陀の弟子に摩訶槃特(マハーパンダカ)、周利槃特(チューダパンタカ)という兄弟が居た。兄摩訶槃特は聡明だったが周利槃特は愚か(兄よりすぐれた弟なぞ存在しねぇ!)で、三年経っても一偈すら理解出来ず、人々は嘲り馬鹿にしていた。
 或る日周利槃特が祇園精舎の門前で立っているのを見て、仏陀は何をしているのかと声を掛けた。周利槃特は「世尊よ、どうして私はこんなに愚かなのでしょう、とても仏弟子にはなれません」と答えた。これに仏陀は「愚者でありながら己が愚者だと気付かぬのが愚者である。お前は己が愚者であることを知っているのだから真の愚者ではない」と説き箒を一本与え「塵を払い垢を除かん」と唱えながら掃除するよう命じた。周利槃特は命に従いこの一句を唱えながら箒で塵を払うた。そして暫く経った或る日、周利槃特は修行僧に「私は生来愚鈍で皆さんのように多くを知りません。然したった一句憶え、その訳を習い実行しています」と話した。これを聞いて仏陀は「千章を暗唱するも句義正しからざれば、一句を聴いて悪を消滅せるにしかず。経を誦すること多くも理解せずば何の益あらん。よく理解してかつ行うべし」 と説いた。
*5
 ケンシロウはリュウケンを病死と思い込んでいたが(JC:08:137)、埋葬には関わったらしい(JC:01:173)。ケンシロウか、そうでなければトキが埋葬したと考えるのが筋だ。ということは、ケンシロウ乃至トキはリュウケンの亡骸を見ている筈である。にも関わらずラオウ様はトキにもケンシロウにも殺害がばれるとは考えておられなかった。即ちリュウケンの亡骸には外傷などなかったわけだ。ならばラオウ様は秘孔の効果だけでリュウケンを死に至らしめた筈である。リュウケンの出血は持病に拠る吐血のみ、ラオウ様の手より垂れた血は御自らの血に違いない。故にケンシロウは前々からリュウケンが弱っていたこともあり病死と思い込んだ。然し知識に勝るトキはリュウケンの亡骸から経絡の工合を読取り真相を悟ったのであろう。よって核の炎でリュウケンが死んだ『リュウケン外伝』は信用出来ない。リュウケン死歿は核戦争後である。
*6
 陸上競技800mの世界記録は2007年二月の時点でウィルソン・キプケテル(デンマーク)の1分41秒11(1997/08/24更新)。二分半での走行距離は1.1868km。
 陸上競技1500mの世界記録は2007年二月の時点でヒシャム・エルゲルージ(モロッコ)の3分26秒(1998/07/14更新)。二分半での走行距離は1.092km。
*7
 支那の武術は古来より黒社会と深く結びついていた為所属する幇会の者のみに通じる様々な合図符牒の類が伝えられており、聖極輪、天帰掌、堕天掌もその類のものであったと考えられる。
*8
 然し直後ラオウ様の拳を封じんとリュウケンが戦う。この時のトキはまだ甘く、ラオウ様の拳を封じるのを忍びのう思うていたかも知れぬ。故にリュウケンにお願いしますと任せたのではないか。
*9
 因みにカイオウもラオウ様と海岸で再会し自傷とともに情愛を棄てて以降(JC:23121:)でないと魔闘気を纏えなんだと思う。

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