サヴァ アサム世家

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名称・呼称アサム
渾名・異名アサム王
初登場『北斗の拳』第219話「英雄あり!の巻」
所属サヴァ王国
拳法・闘法大乗南拳
身分・階級伝承者/国王→兵士
属性・分類父親/英雄
漢な言葉そうか(JC:26:037)

続き

メモ*1

アサムについて1

 「酸っぱい」を意味するインドネシア語。

アサムについて2

 インドシナ〜マレー半島原産の常緑樹。オトギリソウ科フクギ属。ゴラカやマンゴスチンの仲間。果実を未熟な内に採集して乾燥させて料理に使う。「酸っぱい」を意味する名の通り酸っぱい。

アサムについて(ホントの解説)

 サヴァ建国の王。カイ、ブコウ、サトラ、サラの父。副官はコドウ。愛馬は黒影。大乗南拳の名手。国民には「われらの神!!」と讃えられた(JC:25:075)英雄王である。

アサム立志

 峻険な山脈で隔離されたサヴァ王国は曾て"神の捨てた地"と呼ばれる野獣どもが跋扈する無法の荒野であった。
 時を遡ること「20数年」前、骸で埋め尽くされた"神が捨てた地"で、馬上に三子を抱くアサムは立志した。

や……やはり
立ち上がらねば
ならぬ
この国をひとつに
せねば!!

 傍らにいたコドウは「し…しかし/そうなれば/アサム様自身の/幸せを放棄/することに」「いずれ/この子達を/犠牲に/することも」と危惧するが、アサムの意志は固い。

いや!

こんな時代が
つづいてはならぬ
誰かがやらねば
ならぬのだ!!

 アサムは「神が捨てた地を/その手で拾いあげる/ために!!」「みずから国王を/名乗り この地の/平定のために立ち/あが」り、辺境に野獣どもを追い払って建国の志を遂げた。

退くことを知らぬ三兄弟

 辺境に追い払ったとはいえ、野獣どもがサヴァを諦めたわけではない。野獣どもは依然サヴァの国土を虎視眈々と狙っていた。本来アサムは「ひとりの兵/として」死ぬことを望む戦士である。自ら討って出て野獣どもを一掃することも出来た。然し出来ない理由があった。愛息三人の不仲である。

 早くに夫人を亡くしたアサムは子守り歌を歌ってやれぬかわりにオルゴールを自ら作って子を寝かしつける程に愛子を慈しんだ。然し三王子が「決して相 和する/ことはない!!」「このままでは/いずれ国は三つに/割れましょう」と予言されると、激情に駆られて予言者を殺しながらも、「国が三つに割れる事を/恐れ」、「分け隔てを/するからこそ/三人が割れるのだと」考えて、「無理に公平/に」「書も拳も/時間さえも/すべて公平に/長兄次兄末弟の/区別なく」「時には/ひとつの菓子/さえも/三つに割って」「三人の兄弟を/まったく平等に/育て」た結果、却って「三人は/退くことを知らず/そのまま/成長し」てしまった。

あの三兄弟は
気力 闘力 拳力
そのすべてに
おいて互角!!

だが最大の
酷似点は
その性情!!

いずれも
他人に譲る事を
知らず退くことも
知らず!!

 ある時アサムの愛馬黒影が素晴しい駿馬を生んだ。三人はその若駒を欲し、取り合っている内に殺してしまった。

餅ならば
三つに割れる
だが生き物は
割ることはできぬ

まして
このサヴァは生きている
人間が住む国

割ることは
できぬのだ

 アサムは後継者を決められぬまま年老い、病を得た。

ぬーーん/大乗南拳!!

 サヴァは「アサムという/一枚岩の上に/乗った国」である。アサムが「倒れれば/国もまた/崩壊する」。三兄弟のことがある以上、討って出ることは出来ない。然し「アサムの/力が衰えたと/わかれば辺境に/追い払った野獣どもが/雪崩となってこの国へ/攻め入って来」る。それ故にアサムは「その強さを常に民に/誇示していなくては」ならない。作中ではコンモドゥス帝*2よろしく闘技場で猛牛を打殺していた*3。その強さはケンシロウをして「まだ あんな/英雄が……/この国には/とどまる価値が/あるかもしれん」「あれだけの/腕があれば/野獣どもなど/一掃できよう」「病に/冒される前に/それが/できたはずだ」と評する程である。可成りの腕と云える。
 然しこれは危ういものであった。先づサラ曰く「たぶん/この民の中にも/野獣どもの/スパイが」忍び込んでいる。それどころか野獣のスナイパーがボウガンでアサムを狙ってすらいた。更に控え室の暖炉には暗殺隊まで潜んでいたのだ。
 抑も国民は「国王は/健在!」「アサム王がいるかぎり/この国は/安泰だーー!!」と讃えていたが、殊更に「アサムは/健在!!」「国王は/健在!」と誇示することが、却ってアサムの健康を疑う理由になる。現にアサムの吐血を見た暗殺隊は「やっぱり/病んでやがった」と云っている。「やっぱり」病んでいたのだ。
 サラの心配は当然である。こんなことが長く続けられるわけがなかった。

大乗南拳奥義秘書の男

 そんなアサムと国の行く末を案じたサラは女の身で強い男を探しにひとり旅に出、運良くケンシロウと出会い連れ帰った。然しアサムは「どこの/馬の骨とも/わからぬ男に/わしの病の事を」漏したことを咎め、「男の性情は/拳を交えてみねば/わからぬ!!」「ケンシロウと/やら」「気の毒だが/わしの病を/知った今/ここから生かして/帰すわけには/いかぬ!!」と襲いかかる。

かつてこの国の
ためと称し
何人かの男が
わしに近付いた

だがそのすべてが
わしを倒し国王にとって
かわろうとする
野望にとりつかれた
クズどもであった

 アサムの怒りは尤もである。だがアサムは病み疲れ、ケンシロウは最強者である。いとも簡単にいなされ、かわされ、抑え込まれ、手も足も出ずケンシロウの前で膝を着く。然し死点を点かないケンシロウにアサムは問う。「な…なぜ打たぬ/打てばこのわしは絶命!/それをなぜ」。ケンシロウ答曰「オレの拳は/倒す相手を/選ぶ」。それを聞いてアサムは病で吐血した。
 その時ケンシロウが床の瓦礫を拾うや暖炉に一閃、暖炉の中から野獣どもの暗殺隊がまろび出た。

やっぱり
病んでいやがった

 アサムの病は殆どバレていたのだ。
 然しケンシロウがいとも簡単に暗殺隊を爆殺する。不思議な拳法を目の当たりにして驚くアサムとサラに傍らのリュウが「北斗神拳て/いうんだ」と教える。アサムは大乗南拳奥義秘書の記述を想起する。

北斗とは死を
司る星
北斗あらわれし時
哀しみを語るがよい
心を開くがよい

北斗蒼く
ふるえる時
道は開かれる

 「つ……/ついに/人を得た!!」と確信したアサムはケンシロウに心を開く。

失礼は承知!
承知の上で
お願いする

この国を
その手で
拾いあげて
くだされ!!

お願い
いたす!!

この国を
存続させるために!
この国の未来のために
三人の後継者たちを
抹殺してくだされ!!

わが国の副王
そして わが
実子たちだ!!

 アサムは予言者の進言を拒絶し「捨てるものか!!」と誓った愛息三人の抹殺を依頼した。

アサム出征

 ケンシロウに三王子抹殺を依頼し、副官コドウに後事を託したアサムは「ひとりの兵/として辺境の/野獣どもの/討伐に向かう」。その直後アサムが国を出たと知ったシュタールの野獣どもがサヴァの国土を侵す。サヴァは真実アサムの「一枚岩」、野獣どもは三帝軍など微塵も恐れてはいない。カイ、ブコウ、サトラは容易く野獣の罠に陥り大切な兵を失う。ケンシロウの助勢で事なきを得るも、アサムは三兄弟の無様に涙した。

 病に苦しみ血を吐きつつも、優に百を超す野獣を殺戮し、竟に頭目ヒューモを討取って、アサムは力尽きる。寒風吹荒ぶ雪原に倒れ伏し、「で…できる/ことなら/今一度…/今一度/わが子達に/………」「あ……/会いた/かった……」と悔いを残す。然し其処に現れた三つの影、「こ…これは/ゆ…夢か!!」と驚くアサムをケンシロウに殺された筈の三兄弟が抱き起し、「ゆ…夢では/ないんだ/ほら オレ達も/こうやって/生きて!!」と手を握る。

す……
すまなかった
親父!!

親父の心を
知らずオレ達は
自分の事だけを
ゆ…許して
くだされ

あ……あの
北斗の男が
教えて
くれたんだ!!

一番大切な
ものを!!

 ケンシロウは「わざと圧倒的/力をみせつける/ことで」「三人の心を/ひとつに!!」し、三兄弟に「互いに退くこと」「互いに譲りあう/こと」を教えた。アサムは「わ……/わしの心を/本当の心を/拾ってくれた!!」ケンシロウに感謝の涙を流す。アサムの「本当の心」とは「あ……/あの退く事を/知らぬ三人が……/今 昔の/三兄弟に……」戻ることであった。

一介の民として/ひとりの/兵士として死ぬ

 アサムは戴冠式で沸き返る群集の中に居た。王宮の壇上、中央の玉座には新国王カイが坐る。向かって左をブコウ、右をサトラが輔する。壇上の衛兵が群集の中にアサムの姿を認めブコウに進言する。「ブコウ様/ア…アサム王が/あんな所に!!/この壇上に/おつれしな/ければ」。然しブコウは「いや/あの場所こそ/父の選んだ/場所なのだ」「父が愛した/民たちの/中こそな…」と斥ける。
 アサムの目は最早見えない。アサムは問う。

コ…コドウ
どうだ
息子たちは

さ…三人とも
揃って
おるか!?

 コドウは答える。

は…はい!
カイ様を中央に
三人とも
りっぱに!!

 「そうか……」とアサムは微笑む。玉座のカイが既に死んでいようとは夢にも思うまい。雪原からの帰路、カイはヒューモの残党に刺されて死んでいる。然しアサムが知る必要はなかった。
 年老い、病み疲れ、曾ての面影は既になく、民もアサムが群集の中にいるとは思わない。「ようやく」「ようやく/一介の民として/ひとりの/兵士として死ぬ/ことができる」。アサムは「ここまで/20数年」を振り返る。
 子供が落したボールが転がってくる。微笑んで拾い上げるアサム。子供はアサムが判らない。

おじさん
ありがとう

 アサムは子供の頭を撫でて訊ねる。

ボウヤ……

この国は
好きかい?

 子供は答える。

う…うん!

好きだよ

父や母も
この国が
大好き
だって

 アサムは一言

そうか

 と手を振った。

ケ……
ケンシロウ
さん

 アサムが手でケンシロウを探す。
 静かに手を取るケンシロウ。

ケンシロウさん
ありがとう

い…今……
わしが望んだものが
全てここにある!

 ケンシロウがアサムに最期の言葉を贈る。

あなたの
気持ちが
わかったのは
息子たち
だけではない

この国の
民は みな
あなたの
子だ!!

 アサムの目から長く涙が落ちる。

ケ…
ケンシロウさん
………

こ……これで
やっと わしは父と
して 死ねますな……

 アサムは静かに逝った。

アサムの評価

 アサムは一代の英傑である。英雄王と呼ぶに相応しい大事業を成し遂げた一流の人物だ。『北斗の拳』随一の名君である。
 だがよく判らないことがある。アサムの立志が「20数年」前であることだ。「20数年」も前から「神が捨てた地」は「野獣どもの/天下となっていた」らしいのだ。然し「20数年前」というと、核戦争よりずっと前のことにならないだろうか。

神が捨てた地?

 「20数年」前というと、どう勘定しても核戦争よりずっと前のことになる。勘定する方法は幾通りも考えられるが、リュウの背格好から推測する方法が解り易い。
 リュウの身長はだいたい1mから1.3m程度である。1〜1.3mというと五歳か六歳程度の男子がこれくらいである。仮にリュウを五歳とするとラオウ様の御帰天は最大で五年前のこと、従ってアサムの立志はラオウ様の御帰天より十五年以上前のことになる。
 拳王軍の活動期間がどの程度であったかは判断が難しい。だがリンの体格や背格好から推測すると、第一話からラオウ様の御帰天が最大で三年程度だ。核戦争はケンシロウがサザンクロスに辿り着く一年前のことである。
 核戦争から四年後にラオウ様が御帰天されたとすると、ケンシロウのサヴァ入国は核戦争から最大九年後となる。核戦争が「199X年」のことであるから200X年だ。

 さて、その「20数年」前である。即ち198X年、「数年」の幅によっては197X年ということになる。

 197X年!

 これは問題である。ケンシロウが生まれたのが丁度そのくらいだ。抑もハンによると「二十数年前」というと「世は終末戦争への/道をまっしぐらに突き/進んでいた」(JC:20:140)。乳飲み子のケンシロウがラオウ様に抱かれて修羅の国を船出している。その頃にアサムは幼い三子を抱いて立志している。意外とケンシロウとカイ、ブコウ、サトラは年齢が近いのだ。ケンシロウの方が年少である可能性すらある。
 サヴァは1970〜1980年代には「神に捨てられ」ていたわけだ。これはなかなか凄いことである。渋谷PARCOが開店して原宿が若者文化の発信地になりはじめた頃にサヴァは野獣どもが跋扈する無法の荒野だったのだ。そんな荒野でアサムは自らの幸せを放棄し我が子すら犠牲にするやも知れぬ建国の志を立てたのだ。

予言者殺害

 そんな時代だからこそ、アサムが予言者を頼ったことは、寧ろ当り前のことだったと云える。「新宿の母」栗原すみ子の名が知られ始めるのが1970年代のこと、細木数子も1982年の出版が契機になって知られるようになった。この頃の政治家や経営者は当り前に占い師の助言を信じていた。アサムもそうした為政者のひとりだったわけだ。
 アサムの予言者殺しはしばしば読者の批判の対象になるが、然し考えてみれば、殺害は行き過ぎとしても、排除はせねばならなかっただろう。何せ王に対して王子を「殺せ」と命じられる程の予言者である。後々国王の権威を侵す存在にならなかったとも限らず、現に後継者についての予言は行き過ぎである。それにこの予言の所為でアサムは三王子を「無理に公平」に育てはじめたのだ。結果としてこの予言がサヴァの危機を招いたのである。アサムが殺さないにしても、遠からずコドウ辺りに討たれていただろう。

aside

*1
 本記事は1998年から2004年まで執筆掲載していた『北斗人物列伝』の再編集掲載記事です。2004年にサイトを改装している最中にHDDがクラッシュし、全てロストしたと思っていましたが、別のHDDに取っていたバックアップを2011年三月に発見したので、少し手を加えて再掲することにしました。
*2
Lucius Aurelius Commodus Antoninus
生没:161.8/31 - 192.12/31
在位:180 - 192
 第十七代ローマ皇帝。ネルウァ=アントニヌス朝最後の皇帝。
 解放奴隷の召使いに全権を任せ遊び呆けた暴君であるが、特筆すべきは剣闘士競技に熱中し、自ら試合に出場して多くの剣闘士や猛獣を手に掛けたことだろう。甚だ信じ難いが、生涯に一万二千人の剣闘士を殺し、一人で半日の内に熊を百頭射殺し、槍でライオンを百頭突き殺したという。ユピテルの化身、ヘラクレスの息子などと自称した。
 最期は愛妾マルチアに裏切られ、浴室でレスリング教師ナルキッソスに死闘の末に絞め殺された。闘技場では殺しようがなかった為という。
*3
 民が当り前に観覧していることから、このようなショーは日常的に行われていたことが解る。

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